大事にされなかった生き方、大切に守られる女

世間のどこにでもある女の人生、泣き笑いしながらのそれを書く

随筆、詩を書こうと思います。
大事にされなかった人生、大切に守られているいまの人生、明日はわからないけれど、それを書くこの作品は残そうと思います。

随筆「薄夜」

         赤い自転車
前の前のまえ、住んでいたボロアパートがあった。そこで男が消えた。彼は一階に暮らし私はその上だった。妻をもらった、あの六年前のことだった。
「夫婦のことは、そちらでやってください」
妻を迎えに帯広に行ったとき、東京での用事をいろいろやってくれた。妻と暮らし始めたときに上にあるメールがきた。
「そうか」
私はこう返事をした。これ以来メールも会話もしなかった。
人を拒絶するにはなんらかの理由がある。それを私は訊きもせなんだ。むこうからのメールは何回かあったが返信もしない。内容も見ずに消去した。彼の心の動きがわかっていたからそうした。これの精神は不安定で、そんなものを相手にする気はない。


私と妻と彼、東京で飯をくうのを楽しみにしていた。そんなとき、このメールを送ってきた。精神がおかしいから内容に罪はない。私は、「おい、なんでなら、気に食わんことでもあるんかい」と、怒りもしなかった。
メールでなく目の前でこれをみせたことがある。突如反対の事を意味不明に言い出す。そのときも怒りを抑えた。


おかしい脳みそかがどんなものか知っている。相手にしない、これしかない。しかし、脳がまともなときもある。彼に、「世界一の昼飯を食べさせて下さい」と、言うから手料理でなんども作ってやった。私が作品「神曲」を書く原因を作ったのは彼であった。いちページ書くたびに下に持って降り熱心に読んでいた。あのむつかしい文章が読める人だった。


あのメールのあと、彼は消えた。私が相手していたならそうはならなかっただろう。どこへ連れて行かれたか薄々わかっている。
外に赤い自転車を置いたまま消えた。私は間違っていたかもしれない。

×

非ログインユーザーとして返信する